キャリプラン演習
3年生担任
橋本親典・佐藤弘美
建設工学科は,平成17(2005)年にJABEEプログラムの新規審査を受けるあたり,プログラムの特色の1つに「自立した建設技術者育成のた めのキャリア教育の充実」を挙げました。これは,卒業後の就職や進学等の将来設計を立案し,自立した建設技術者になることを意識させ,4年次の「卒業研 究」や就職活動・大学院進学等の接続を目的として,3年次のキャリア教育の充実を図ることを目的としています。
その目玉の演習科目として,3年次前期に開講する「キャリアプラン演習」があります。学年進行とともに新しい科目を開講するため,実際には,平成19(2007)年から本科目が動き出しました。今年で5年目を迎えます。
本演習の課題は,前半と後半から構成されています。
前半の課題は,毎年6月第1土曜日に開催される本学科卒業生の同窓会である美土利会総会に合わせて,複数の卒業生による職業指導「美土利会先輩と の懇談会」を受けることにより,建設業務の計画と実施•マネジメントに関わる具体的な仕事の内容や現在の建設技術が抱える問題点を理解することです。
今年は,学生の進路先として,(a)公務員・公的機関,(b)コンサルタント,(c)ゼネコン,(d)大学院進学・研究職,および(e)建築系の 5つのグループに分類し,1班10名前後で構成する班別に,懇談会で質問する質問票を作成し,事前に講師の方々に質問内容についてコメントを作成していた だきました。懇談会当日は,この質問票について,学生と講師との意見交換会を実施しました。
後半の課題は,前半で学習した情報に基づき,3年後期に開講するプロジェクト演習を受ける建設系研究室を決定するために,建設技術者あるいは研究者としての生涯設計を立案するための資料収集,分析および報告書の作成を行うことです。
この報告書による生涯設計を希望研究室の教員の前で発表し,最終的に配属研究室を決定し,3年次後期から,配属された研究室においてプレ卒論として「プロジェクト演習」という演習科目に着手することになります。
今年は,6月 4日(土)に,午前9:00~午後3時まで,工業会館2Fメモリアルホールとセミナー室において,「美土利会先輩との懇談会」を開催しました。また,13 名の受講生が,徳島県建設センターで開催されました美土利会講演会と懇親会に出席しました。懇親会には,美土利会より会費を援助していただき無料招待させ ていただきました。
懇談会に講師として出席していただきました美土利会会員は,以下の4名の方々です。
大江猛史氏(昼間コース(1) H10年卒)
大西一賢氏(昼間コース(5) H14年卒)
橋本紳一郎氏(博士前期課程 H15年修)
平塚和男氏(博士後期課程 H17年修)
懇談会は,担任が進行役を務め,最初にメモリアルホールにおいて,講師4人の卒業後の職歴を中心とした自己紹介や学生生活の思い出,現在の仕事の内容,職業観およびやりがい等について講演から始まりました。
そのあと,メモリアルホールとセミナー室を使って,講師4人のブースを作り,午前中2回,午後2回の各講師との意見交換会を行いました。
最後に,各講師の方々から,本日の感想ならびに送る言葉を頂き,懇談会を閉じました。
美土利会先輩との懇談会の具体的なプログラムは,当該年度の3年次担任が検討することになっております。したがって,毎年同じプログラムではあり ませんが,懇談会の趣旨は継続していきます。来年以後も引き続き,「美土利会先輩との懇談会」を開催していきたいと考えております。今後とも美土利会の諸 兄のご協力をお願いします。
全体懇談会風景(登壇者:大西一賢氏)
全体懇談会 学生聴講風景
個別意見交換会(講師:大江猛史氏)
個別意見交換会(講師:大西一賢氏)
個別意見交換会(講師:橋本紳一郎氏)
個別意見交換会(講師:平塚和男氏)
美土利会総会あとの懇親会出席風景
新任教員紹介
新任教官紹介
武藤裕則
河川・水文研究室
昨年11月1日より河川・水文研究室を担当させていただくことになりました,武藤裕則(むとうやすのり)と申します。
出身は大阪市ですが,小学3年の時に近郊の大阪府柏原市へ転居しました。江戸時代に大和川が付け替えられた,その起点から歩いて5分の地で,当時 は河道の砂州上で友達とチャンバラなどをして良く過ごしたものです。その後京都大学へ進学し(工学部交通土木工学科),卒業研究で防災研究所附属宇治川水 理実験所に配属され,初めて研究対象として河川を眺めることとなりました。修士修了後,指導教授の縁で英国ブラッドフォード大学へ任期付助手として赴任 し,複断面蛇行流路における乱流計測を主テーマとして3年間滞在の後,京都大学防災研究所の助手に採用されました。出身研究室に配置され,しばらく河床変 動や局所洗掘に関する実験や,自らが運転するボート(一級小型船舶免許保有)に流速計を登載しての洪水流観測などに従事しておりましたが,後者の実績の延 長で2007年2月に同研究所附属白浜海象観測所(和歌山県白浜町)に配置換となり,海洋観測や沿岸地形変動観測にも取り組んでおりました。この間,学位 論文はブラッドフォード大学へ提出しております。
これまで私が取り組んできた研究を,対象(縦糸)と手法(横糸)という面で捉えると,縦糸には「水害・防災」「乱流」「流砂と河床変動」「洪水 流」などがキーワードに並びます。一方,横糸は「実験」「観測・調査」が2本の太い軸となります。最近は,河川の生態系や環境の基盤としての流水や土砂の 動きの重要性に着目し,水理学的に裏付けられた河道の構造が生態面で有する機能の解明,さらには良好な環境を誘導する工学的方法の開発,に興味を持って勉 強を進めております。水理現象の本質を理解しその素過程を解明する点において実験・観測の重要性は揺らぎなく,学生さんに対しては,研究や教育を通じて本 質に迫ることの面白さを是非知っていただきたいと考えてます。
徳島は,四国三郎・吉野川をはじめとして魅力あふれる河川が多く,そこでのテーマ設定も多岐にわたり,河川を研究する者にとっては大変やりがいの ある土地です。そこでまず大事なことは,河相(川の個性)を自然と社会から知ることと考えます。しかしながら私にとってはなにぶん初めての土地故,皆さま にお教えを乞うことも多いことと存じます。何とぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
塚越雅幸
維持再生工学研究室
平成23年4月1日付けで,維持再生工学研究室(上田教授)に助教として赴任してまいりました塚越雅幸と申します。出身は埼玉県熊谷市ですが,暑い夏は苦手です・・・。
建築家にあこがれ,東京電機大学工学部建築学科に入学し,念願叶い設計コースに所属しました。設計について学ぶにつれ,構造物がどのように・どの ような材料で建てられているのか興味がわき,卒論でお世話になった,東京工業大学大学院,建築材料系の研究室に進学しました。修士・博士課程の間,防水層 や塗料など,仕上材料のコンクリート構造物の保護効果に関して研究に取り組んできました。博士課程修了後は,半年ほど同大学研究員を,その後,首都大学東 京にて特任助教として約1年間勤務し,今年,徳島大学にまいりました。
現在は,仕上材料による構造物の保護効果に関する検討と,材料の微細構造と性能の関係に着目した研究を行っています。建物へ雨水の侵入は建物の劣 化を促進させる要因となります。すなわち,構造物を長寿命化させるためには,建築部材に水を接触させない事が重要になります。そのため仕上材料は漏水防止 だけでなく,構造物の保護効果の観点からも重要視されています。ただし,仕上材料自体も徐々に劣化が進行し,また下地部材も均質ではなく,時にはひび割れ 等も発生します。建物を長く安全・快適に使い続けるためには維持管理が必要であり,コストの面からも最適な補修改修時期の予測は重要な課題です。建築部材 の劣化には様々な要因が複雑に作用し合い,正確な推定は難しいとされていますが,建物の耐久性評価の一助となるような研究が進めていければと考えておりま す。
よくよく考えてみると,昔思い描いていた将来像からは少し私の進路(興味)は逸れて,それは周りの環境に強く依存していたのだと感じています。徳 島大学で学ぶ学生のみなさんの将来の夢の実現の為,大切な学生時代をサポートできるよう,またいろいろな刺激が与えられるよう頑張っていきたいと思いま す。
徳島大学美土利会に所属できる事を大変光栄に感じております。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
就職状況
平成23年度修了・卒業予定者の進路
平成23年度就職担当
山中 英生
1. はじめに
美土利会会員の皆様には,平素より,修了生・卒業生の就職に格別のご高配・ご支援を賜りまことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
さて,今年度の就職戦線はいざ本番という時期に発生した大震災のショックで,遅れ気味で進行しております.平成23年度修了・卒業予定者の進路希望と内定状況等について簡単にご報告させて頂きます。
2. 進路希望状況
下表は平成23年度の博士前期課程ならびに学部の修了・卒業予定者の進路希望です。学部生118名(昼間コース:91名,夜間主コース:17名) 中41名(37%)が大学院進学希望で,次いで建設会社(17.8%),コンサル(5.9%),公務員(4.2%)が続いており,建設会社希望が例年より 高くなっていました。大学院生(53名)では,希望上位は,コンサルタント(15.1%),建設会社(15.1%),公務員(9.4%),鉄道・道路 (7.5%)の順となっています。自営,未定の数値は,既就職者および就職希望未定者の合計です。また,進路希望調や活動報告を提出しない学生(含休学 者)も“自営・未決定”に含まれます。
3. 内定状況および求人企業数
平成23年9月8日時点で「学部昼間コース,同夜間主コース,および博士前期課程における企業への就職希望者」の内,それぞれ約53%,50%,73%の学生の進路が確定しています(全体:59%)が,いずれも昨年に比べて低い値となっています。
今年度の建設工学科への求人企業数は約150社であり,この内43社の企業には直接ご来校賜りました。また求人企業中,推薦応募可能企業は約80 社です。これまで12名の学生に推薦状を作成しました.最近は自由応募でエントリーして,選考段階が進んだ時点で推薦状の作成を希望するケースが増えてい ます.学生の第一希望であることを確認できた場合には,学科推薦状を作成しています.また,教授等の推薦状の提出を求めるケースも見られます.
4. おわりに
平成23年度の就職戦線もまだ終息していませんが,平成24年度の修了・卒業予定者については,橋本教授,小池事務官の担当 で支援を開始しております.ただし,近年の就職活動の長期化への批判から,エントリー開始が12月からとなるとのことで,学生の活動は2ヶ月ほど遅れるこ となり,短期決戦の就職戦線となるようです.こうした新卒者市場の混雑現象による問題は,景気のいかんにかかわらず起こる問題ですが,建設工学科では,従 来通り3年生からキャリアプラン演習でのOB講師による業界学習を進めており,学生らが適性にあった業種の選択できるよう,信頼できる求人情報の収集・伝 達を通じて,支援していきたいと考えておりますので,ご協力のほどよろしくお願いします.
学生の就職活動に関しまして今後とも倍旧のご指導・ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
教室だより
建設工学科長 長尾 文明
1.はじめに
徳島大学美土利会会員の皆様には,お元気でご活躍のこととお喜び申し上げます。平素は徳島大学の学生の教育・就職・インターンシップ・現場見学・ セミナー・共同研究など,学科の教育・研究・運営に多大のご協力・ご支援を賜っていますことに大変感謝しております。厚くお礼申し上げます。
2011(平成23)年度は,学科長:長尾文明,副学科長:橋本親典教授,また,就職指導:2011(平成23)年度卒業・修了者は山中英生教授,2012(平成24)年度卒業・修了者は橋本親典教授がそれぞれ担当いたします。どうぞ,よろしくお願いいたします。
2.人の動き
1)退職・転出された教職員
2011(平成23)年3月末日に,森本恵美助教(学長裁量プロジェクト)と石田達憲助教が任期満了で退職されました。また, 2011(平成23)年4月末日に, 源貴志助教(先端工学教育研究プロジェクト)が任期満了で退職されました。
森本恵美助教は,2003(平成15)年3月に本学建設工学科を卒業され,その後,本学大学院博士前期課程及び博士後期課程生産開発工学専攻 (2008(平成20)年3月)を修了されました。博士後期課程在学中から教務補佐員として長期インターンシップの運営に携わられ,2008(平成20) 年4月から助教として,長期インターンシップの運営と学生の教育・研究に励まれました。本年4月からは,本学工学部創成学習センターの助教(学長裁量ポス ト)に就かれ,引続き長期インターンシップの運営と研究を続けています。建設工学科の学生の教育・研究指導等は継続していただきます。
石田達憲助教は,2006(平成18)年3月に本学建設工学科を卒業され,2008(平成20)年3月に本学大学院博士前期課程エコシステム工学 専攻を修了され,株式会社エコー建設コンサルタントに就職されました。その後,2009(平成21)年12月1日付けで助教に就かれ,建設工学科とエコシ ステム工学コースの学生の教育・研究に励まれ,教職員の中で最も学生に近い存在として学生の相談等に応えていただきました。本年4月からは,社会人学生と して,本学大学院博士後期課程に在学中です。今後も引続いて学生の指導等と優れた博士論文の完成を期待しています。
源貴志助教は,2005(平成17)年3月に本学建設工学科を卒業され,引続き,本学大学院博士前期課程及び博士後期課程建設創造システムコース (2010(平成22)年3月)を修了されました。その後,2010(平成22)年5月1日付けで,助教として採用され,この年から立ち上がった工学部の スーパーテクノロジーコース(STC)の学生の教育・指導を熱心に行いました。本年5月からは沖縄県農業研究センターの任期付研究員として勤務されていま す。沖縄特有の風土に適した農業施設・器具等の開発や改良等に取組まれており,新たな分野での活躍が期待されます。
ご退職・転出されました皆様の今後のご健勝とご多幸をお祈りいたします。
2)新任の教職員
2010(平成22)年11月1日付けで武藤裕則教授が,2011(平成23)年4月1日付けで塚越雅幸助教が着任されました。
武藤教授は,1989(平成元)年3月に京都大学工学部交通土木工学科を卒業し,1992(平成4)年3月に同大学大学院工学研究科修士課程を修 了され,同年4月から2年間英国Bradford大学工学部助手として勤務されました。帰国後,1994(平成6)年4月から京都大学防災研究所助 手,2007(平成19)年から同准教授を務められています。その間,1997(平成9)年7月には英国Bradford大学において,Ph.Dを取得さ れています。河川の流れの構造,河床変動,洪水災害,さらには河川環境保全等に関する実践的研究等を行われ,2002(平成14)年には中小河川の氾濫に 関する研究で自然災害学会学術賞を受賞するなど顕著な業績を築かれています。岡部教授の後任として河川・水文研究室のみならず本学科のさらなる発展に大い に貢献いただけることを期待しています。
塚越助教は,2003(平成15)年3月に東京電機大学工学部建築学科を卒業し,2005(平成17)年3月に東京工業大学大学院総合理工学研究 科環境理工学専を修了し,2009(平成21)年9月に同大学院博士後期課程を修了しました。2009(平成21)年10月から東京工業大学大学院建築物 理研究センターの研究員に,2010(平成22)年6月から首都大学東京大学院都市環境学部建築都市コースの特任助教を務められました。上田教授の維持再 生工学研究室に所属し,鉄筋コンクリート構造物等の仕上げ材の保護性能,各種コンクリート表面保護材料の性能評価,構造物の合理的維持管理システムの構 築,さらには社会基盤構造物の長寿命化等の研究と教育への貢献が大いに期待されます。
なお,両先生の着任によって建設工学科の運用定員はすべて充足され,表に示した教職員一同で建設工学科の教育・研究に励みます。
3.JABEEによる教育プログラムの認定
平成17年度にJABEE(日本技術者教育認定機構)認定を受け5年が経過し,昨年度にJABEE継続審査を受け,本年3月の学部(昼間コース) 卒業生も引続き認定プログラムによる教育を受けた卒業生として認められました。この認定卒業生は,技術士の第1次試験の合格者(修習技術者)と同等の資格 が与えられ,登録することによって技術士補となることができます。
今回のJABEEの継続認定審査の受審に当たっては,卒業生の方々に教育に関するアンケートにご回答いただくとともに,JABEE認定を受けて卒 業された10名の方々には,審査員との面接をお願いするなど,多大なご協力をいただき誠にありがとうございました。このように,技術者教育は,卒業生と教 職員とが協力して,教育プログラムの充実を図ることが必要であり,卒業生の皆様にも引続きご指導とご協力をお願い申し上げます。
4.修了・卒業生の進路
卒業生・修了生の就職につきましては,毎年会員の皆様方から格別なご支援・ご尽力を賜り,誠にありがとうございます。厚くお礼申し上げます。
2010(平成22)年度(2011年3月修・卒業)の就職状況は,下表のようになっています。括弧内は2009(平成21)年度の数字です。大 学院の修了生が昨年度より増加し,ほぼ,例年なみに近づいています。進路先は進学が1名と若干減少し,公務員,団体,その他が若干増加しました。また,学 部昼間コースでは,3年連続で進学する学生が全体の半分程度となっていますが,他大学や他コースへの進学者も含まれており,建設創造システムコースの定員 40名には届いていません。コンサルタントが若干減少していますが,全体的には例年と大きく変わりません。学部夜間主コースの学生については昨年度と逆の 傾向が見られ,進学が増加し,建築関連分野が減少しています。
以上,厳しい不況下においても従来と同様の就職状況が得られましたのは,諸先輩方のご支援の賜物であり,記して謝意を表します。
なお,平成23年度卒業・修了予定者の就職活動は現在進行中ですが,会員各位におかれましては,今後とも後輩の進路につきまして,倍旧のご指導・ご支援をお願い申し上げます。
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5.おわりに
教職員一同,建設工学科のさらなる発展に努めますので,卒業生の皆様には,今後ともご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
最後になりましたが,美土利会会員の皆様のご活躍とご発展を願い,近況報告の結びといたします。