地盤工学研究室
地盤工学研究室
会員の皆様,地盤工学研究室の近況について報告させていただきます。スタッフは渦岡の他,鈴木壽准教授,上野勝利准教授,木戸崇博技術職員です。 渦岡は計算地盤工学が専門ですが,計算に興味を示す学生が少ないので現象の理解や解析モデルの開発に使うための模型実験を優先して実施しています。河川堤 防や天然ダムの越流時の破壊過程,風倒木と斜面崩壊の関連性,土構造物の地震時挙動などを調べています。鈴木先生は,不飽和土の研究を昨年から本格的に開 始されました。幸い良い学生にも恵まれ,一年で論文ネタとなるデータも得られました。今後も新たな土質試験装置の開発などを通じて,データの蓄積ととも に,「鈴木モデル」の開発を期待しております。上野先生は,地中構造物周辺の空洞による道路陥没などの問題に対して,遠心模型実験や独自に開発された水分 計などを用いて取り組んでおられます。この水分計や水位計は従来法よりも安価に計測できますので,会員の皆様におかれましても使って頂けるチャンスがある ものと期待しております。渦岡の専門が計算地盤工学ですので,両先生の実験に対する経験や技術とそれに基づくアイデアは非常に頼もしく感じており,研究室 全体の活動が個々の研究テーマの進展につながることを期待しています。木戸さんには,研究室の事務や学生実験の面倒をみていだたく傍ら,学科の教務やネッ トワークのサポートをされております。仕事は積極的ですが奥手らしく,いまだ独身ですので婚活中の方がいらっしゃいましたらご紹介お願いします。
学生は総勢25名です。社会人博士課程:1名,博士課程:1名,修士課程:9名,学部4年生:14名となっております。修士1年には同済大学との ダブルディグリー(DD)の留学生が1名おります。日本人学生の視野を広げるため,またアジアの一員として留学生を積極的に受け入れる予定です。
最後に東日本大震災への対応です。研究室では渦岡と上野先生が地盤工学会の災害調査団として何度か現地調査を行いました。調査結果は学会誌などで 報告しております。地盤工学関係では,津波による海岸堤防や河川堤防の被害,地殻変動による地盤沈降が新たなテーマとなりました。前者については堤防の越 流問題などの経験を生かして,当研究室でも取り組む予定です。後者はより深刻な問題ですが,スケールが大きいため思案中です。造成宅地の盛土崩壊や宅地の 液状化による被害について,研究は進んでおりましたが対策が追いつかず大きな被害となってしまいました。今後は安価な対策工法などの開発が進むと思われま す。また,液状化や構造物の震動による被害について,地震動の継続時間の長さや繰返し回数の多さが与えた影響さらには余震の影響を検証する必要がありま す。これも研究は進んでおりましたが,実際の被災事例が少なかったため対策などに生かせる研究成果はまだ少ない状況でした。阪神・淡路大震災以降に直下型 地震への対応が進んだように,今後は海溝型巨大地震への対応が進むものと思われます。研究以外の対応として,一昨年までお世話になった東北大への物資の支 援を地震直後に行い,最近では研究室の4年生が泥出しなどのボランティアで石巻市に出向いています。大災害に際してマスコミは降って湧いた問題のように報 道しますが,多くは予想されたものです。これまでの研究の蓄積を生かして大震災での問題をしっかり検証するとともに,被災地に対しては息の長いサポートに 努めたいと思います。会員の皆様におかれましても,美しく美味しい東北へ是非お出かけください。
(渦岡記)
徳島自動車道現場見学(2011年6月30日)