地域防災研究室

 美土利会会員の皆様方には,益々ご健勝にて,ご活躍のこととお慶び申し上げます.

 現在,当研究室は,中野 晋教授,蒋 景彩准教授,梅岡秀博技術専門職員(地域防災・都市デザイン・河川水文の3研究室を担当)の3名の教職員,博士後期課程学生7名(中国人留学 生2名,社会人5名),博士前期課程学生7名(中国人留学生1名),学部4年生7名の学生,計24名で研究・教育活動を進めています.当研究室の研究活動 は平成16年4月から学内に設置されている環境防災研究センターと深く関わっており,センター所属の粕淵義郎助教(BCP専任)と騎馬貴子技術補佐員も当 室の研究活動には欠かせない存在となっています.

 2009年度の美土利会会報第37号で当研究室の様子を紹介させていただきましたが,以下は最近2年間の研究室の動向についてご報告します.

 中野は,南海地震対策を中心に,地震・津波,高潮,水害の自然災害についてソフト対策を軸に研究を進めています.特に企業, 自治体,学校,医療機関,福祉施設など各種事業所の事業継続計画(BCP)の普及に力を注いでいます.その中で,日本に適した新たな危機管理手法はどうあ るべきかについて検討を行っています.BCPに関しては平成19年以降,原則として月に1度BCP研究部会を開催しています.毎月,約50名(30事業所 程度)のBCP担当者が集まり,BCPの策定方法などについて学んでいます.参加事業所や業種は年々拡大しており,県外から参加する企業も増えています. また,東日本大震災を受けて徳島大学でもBCP策定を進めることになり,このために設置された東南海・南海地震対策委員会の中核メンバーとして粕淵助教と ともに大学のBCP策定にあたる予定です.一方,「防災の常識人」の育成も大切にしている取組みで全学共通教育の中に開設した「徳島大学防災リーダー養成 講座」の運営を担当しています.この講座では「災害を知る」と「災害に備える」の2科目(各2単位)を修得した学生を徳島大学防災リーダーとして認定する ものですが,これと同時にNPO 法人日本防災士機構の防災士試験の受験資格が付与されます.この講座は徳島大学の学生だけでなく,社会人も無料で受講することができるため,社会人を含め て,毎年約100名の防災士が育っています.

 学外での社会活動としては海岸4省庁による海岸における津波防災対策検討委員会,国土交通省国土技術政策総合研究所研究評価委員会,四国建設業BCP審査会,徳島県企業防災推進委員会など,国土交通省や徳島県などの委員を務めています.

 蒋は地盤災害(主として斜面災害)および防災対策の研究を行っていますが,ドクターコースの学生と共に「地下鉄振動による地 盤応答および近接建物への環境インパクトの評価法」,「破砕帯地すべり調査,解析および対策工設計に関する総合的研究」,「逐次施工過程を考慮した盛土・ 切土斜面の進行性破壊解析に関する研究」,「岩盤斜面の不安定評価法に関する基礎的研究」などのテーマにも挑戦しています.

 一方,学内で徳島大学大学院先端技術科学教育部国際連携教育開発センター部門員を務め,諸外国の連携大学と学術交流活動や共同研究を行っています.学外では国土交通省四国地方整備局道路防災有識者などの職務を遂行しています.

 当研究室は減災の観点から積極的に災害現地調査を行っています.最近では「兵庫県佐用町豪雨災害調査」,「東京都北区堀船水害調査」,「霧島火 山・新燃岳の噴火に伴う降灰状況調査」,「中国の三峡ダム貯水池の堪水地すべり調査」,「東日本大震災現地調査」等を行っています.

 

宮古市宿漁港における津波高測量(2011/5/5撮影)